![]() |
千葉大学工学部長 佐藤 之彦 YUKIHIKO SATO |
平成29年4月の工学部と理工系の大学院の改組と同時に工学部長に就任し、5年目を迎えました。本年3月に、この改組後の新しい体制の下で最初の学部生を卒業生として送り出し、既に修了生を出している大学院とあわせて全課程で学生が一巡いたしました。
千葉大学工学部の近況をお伝えする上で、本年度も新型コロナウイルス感染症拡大の影響に触れなければなりません。昨年度は、何もかもが初めての事態であり、卒業式や学位記授与式、入学式などの大人数の集まる行事はすべて中止となり、4月の授業開始を5月のゴールデンウィーク明けに遅らせるなどの大きな変更がありました。また、学内への入構が制限され、第2タームまで(7月末まで)の授業はすべてオンラインで実施し、対面での授業は全面的に中止となりました。このため、昨年度の新入生は、入学したにもかかわらず大学のキャンパスに来ることができない状態が半年近くも続く異例の事態となりました。
本年度は、コロナ対応も2年目ということもあり、昨年度の経験や反省を踏まえて、少しずつではありますが以前の状況を取り戻しつつあります。3月末の卒業式や学位記授与式、4月の入学式については、大学全体の学部や学府・研究科を2つに分けて2部制とし、1回あたりの参加者数を減らすとともに、時間を短縮するなどの措置を講じて対面での実施を再開しました。また、出席者数を減らすために学生のご家族の列席を認めないこととし、代替措置として式典の模様がインターネット配信されました。授業のスタートは、例年通りの4月初旬に戻り、低学年の授業や、実験・実習などを中心に対面の授業を増やすなど、オンライン授業を中心とする中においても、少しずつ対面での教育の機会を増やしました。
オンライン授業は必ずしも悪い面ばかりではなく、アップロードした授業の動画を学生が自由な時間に視聴できるオンデマンド型のオンライン授業では、理解できるまで繰り返し視聴できるため、意欲のある学生にとっては納得できるまで学習できる環境が提供できるメリットも明らかになってきています。また、学生からの評価の高かったオンライン授業を行っている教員の取り組みを工学部全体で共有するFD研修会を開催するなど、コロナ禍における教育の質を維持するとともに、さらにはオンライン授業の可能性を活かしきるための取り組みも進めています。
以上のようなコロナ禍の難しい状況にはありますが、教育・研究の両面において、新しい取り組みも進めています。令和2年度からスタートした千葉大学の新しいグローバル人材育成戦略ENGINE( Enhanced Network for Global Innovative Education)ですが、学部・大学院の全学生に対して必修化した留学については、実際に海外に渡航せずにオンラインで留学を体験する代替プログラムの開発を進め派遣留学を補完する手段として実施しています。
また、本年4月には東京都墨田区の墨田キャンパスがオープンしました。この墨田キャンパスでは、西千葉キャンパスにはない大きな空間や天井の高い空間があり、大規模なプロジェクト型教育の展開など新たな可能性をもたらすものです。このキャンパスでは具体的な活用イメージが明確にできる工学系における活用が先行してスタートしており、中でもデザインや建築、イメージング科学の分野におけるプロジェクト型の教育・研究での活用が始まりました。
さらに、時期は前後しますが、令和元年の10月からは、次世代型アーバンエアモビリティのイノベーション創出に向けて、飛行システム技術の研究開発と若手人材育成を使命とした工学研究院附属インテリジェント飛行センターが設置されました。このセンターは、株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズと一般社団法人先端ロボティクス財団の寄附講座により運営されており、工学、理学、園芸学の教員が分野横断的に参画してイノベーション創出を目指しています。
本年7月からは、学生や教職員などを対象とした新型コロナワクチンの職域接種が始まりました。全国的な変異株の蔓延に伴う感染者の増加は千葉大学内でも顕著になりましたが、10月に入って状況は落ち着いてきたものの、今なお慎重な対応が求められています。コロナ禍により、社会全体でのコミュニケーションのオンライン化が急速に進みましたが、このことは卒業生の皆様と大学の距離が縮まったとも考えており、卒業生の皆様の参画を得た新しい教育の機会なども広がるのではないかと期待しています。今後とも、工学同窓会の皆様のご理解、ご支援を賜りたく、宜しくお願いいたします。