第X部会(都市環境)
■ 都市環境システム学科だより
学科長(教授)大坪泰文
都市環境システム学科を卒業された皆様には、日頃より当学科に対して温かいご支援をいただき誠にありがとうございます。ここ2年間の都市環境システム学科・コースの近況についてご報告いたします。
まず、教員の異動としては、2013年3月に北原理雄先生、丸山純先生、山本一雄先生、また2014年3月には客員教授の中谷正人先生の定年退職がありました。新任教員として、2013年4月に和嶋隆昌准教授、2014年4月に劉ウェン助教と大川信行客員准教授の着任がありました。和嶋准教授は環境リサイク分野、劉助教は都市インフラ分野、大川准教授は都市建築計画分野を担当していただくことになっております。異動ではありませんが、今年度は、郭東潤助教がサバティカル研修により12月までハーバード大学で研修を行っております。帰国後、研修の成果を学科における教育研究活動に活かしてくれるものと期待しております。現在、27名の教員で、1年次からの入学生50名(以下、いずれも定員)、3年次からの編入生45名(社会人15名を含む)、博士前期課程55名、博士後期課程6名の学生の教育研究に当たっております。
人間社会のもつ機能という観点から、様々な都市環境問題に取り組むというのが本学科における教育の基本であり、このような問題の解決において重要なことは、多様な知識を有機的に結びつけ、システマティックに実践することと考えます。そのためには基礎となる学問の修得が不可欠であり、多くの学部の科目はこの趣旨に沿って構成されております。しかし、これら基礎学問を融合させて問題解決に展開するという観点からの科目が足りないという反省から、今年度演習の内容を大幅に変更しました。これまで、それぞれの領域で各論的な演習を行っておりましたが、テーマを「2050年の都市環境を考える」と一つにして、その枠の中で個別の問題について教員といっしょに解決策を考えるというスタイルにしました。地球温暖化、少子高齢化、都市の衰退などの問題を社会のシナリオとして考える能力を涵養することを主眼としています。
卒業生におかれましては、このような学科だよりを見ると,学生時代の年間行事が頭に浮かぶことと思います。その中で最も大きなイベントは卒業研究発表会ではなかったかと考えております。これまでは、演台に立ちスライドを使って10分程度発表するという方式でしたが、これを、昨年度からポスター発表に変更しました。写真で紹介していますように、定められた時間、ポスターの前で個別に内容説明と質疑を行うというものです。これまでは複数の会場で並列に口頭発表を行ってもらいましたが、興味のある発表が重なった場合、一つしか聞くことができませんでした。このような問題が解消されるとともに充分な質疑時間をとることができるようになり、また思う存分1年間の成果を伝えることができるということから学生にも評判がよいようです。
教員が展開している大型プロジェクトを紹介します。山崎文雄教授が、地球規模課題対応国際科学技術協力事業の防災分野「開発途上国のニーズを踏まえた防災科学技術」として「ペルーにおける地震・津波減災技術の向上に関する研究」を行っております。ペルーも環太平洋地震帯に属する地震・津波の多発国であり、地球規模のフィールドで地震・津波の事例収集につながるという科学的側面と日本が世界のリード役を期待される防災分野において国際的に貢献するという側面があります。また、中込秀樹教授は、林野庁の「木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業」に採用され、「丸太燃料流通システムの構築」に関する研究を行っております。これは千葉県山武市のブランドであるサンブスギの有効利用と森の再生を連携させた取り組みであり、技術基盤の確立と地域への貢献を目指しております。
この2年間における都市環境システムコースの教員の受賞を紹介します。山崎文雄教授が「平成26年度防災功労者防災担当大臣表彰」を受賞しました。山崎教授は、地震工学及び都市基盤工学分野で最先端の研究・教育を行うとともに防災行政へ有用な提言を行うなど、防災対策の推進に幅広く尽力された点が認められものです。また、郭東潤助教がInternational Urban Design Conferenceのベストポスター賞を、宮脇勝准教授が「2012年度日本都市計画学会年間優秀論文賞」を受賞しました。この他に、学生の学会賞受賞が8件ありました。
教員も学生も多様な分野で活躍しております。今後とも、社会情勢に対応しつつ、学際領域にふさわしい総合的な教育研究を続けて行きたいと考えております。
(おおつぼ やすふみ)
(2014/12/01)