工学部長挨拶

工学部長挨拶

千葉大学工学部長 佐藤 之彦

YUKIHIKO SATO
生年月日/昭和38年9月3日
出生地/新潟県新潟市
卒業年度/昭和61年 東京工業大学工学部電気・電子工学科卒業
昭和63年 東京工業大学大学院理工学研究科電気・電子工学専攻修士課程修了
     博士(工学)(東京工業大学)

 平成29年4月に工学部と理工系の大学院の改組が行われました。この新しい組織での教育・研究・組織運営がスタートして2年目となりますが、最初の学部の卒業生を送り出す平成32年度までは、様々な実施上の課題を解決しながら先に進む状況が続きます。
 この改組では、工学部全体を総合工学科という定員600名の1学科とし、その下に専門教育の実施単位としての9コースを設置しました。従来の「学科」を「コース」とすることで専門分野間の垣根を低くし、学生や教員の行き来や連携を容易にしています。また、各コースの学生定員は固定されていないため、学生の志望状況や社会の要求の変化などを踏まえて、各コースの学生の人数を柔軟に調整することが可能です。
 このように専門分野間の垣根を低くした狙いのひとつは、視野の広い学生を育てることです。エネルギーや環境問題、少子高齢化の問題、レジリエンスの実現など、現代社会が直面している諸問題を解決するには、自分の専門分野と社会の関係を俯瞰的に捉えることが必要です。そのためには、他の専門分野を見渡せる環境で教育することや、異なる専門分野の学生が一緒にプロジェクトに取り組む授業などを通して、分野横断的なチームワーク能力を育てることが求められます。
 もう一つの狙いは、学生がより適切な進路選択ができるようにすることです。従来と同様に専門分野としての所属コースを決めて入学しますが、これは暫定的なもので、1年次における学修を通して十分考えた上で2年次以降に学び進むコースを決定します。その際に、他コースへの移動を従来よりも容易にしています。
 改組から2年目の後半を迎え、多くの教職員の努力により実績も積み上がってきましたが、いざ実施する段階になって浮かび上がる課題もあります。1年次では、「工学とは何か」、工学の専門分野全体の位置づけ、技術者倫理、コミュニケーション能力の重要性などの共通的な内容に関して、総合工学科全体で一元的に授業を開講しています。これは、総合工学科のすべての学生の学びの出発点を共通化し、総合工学科の人材育成の理念を共有したいと考えてのことです。コース横断的な教員の協力による教材の準備や授業の実施を何とか実現してはいますが、担当教員間の連携や引き継ぎ、200人余りの多人数の学生に対して授業が可能な場所の確保、緊張感や勉学意欲の維持など、解決すべき課題も少なくありません。
 また、2年次に学び進む際のコース決定については、コース間移動希望者が多くなりすぎて収拾がつかなくなる事態も懸念されましたが、面談によりコース間移動が適当と判断された全員の希望を叶えることができました。しかし、十分な理解に基づかずに安易なコース移動を考える学生がいるなど、入学時からの継続的な学修指導の必要性が明らかになる場面もありました。
 さらに、改組を行った際の心配の材料のひとつは入学試験の志願者数に対する影響です。改組初年度の学生に対して行った平成29年度の入試は、改組前の10学科として実施したもので、改組後の1学科9コースでの入試は、平成30年度が初めてでした。改組初年度は志願者が減少するということがよく言われていますが、総合工学科全体としての志願倍率は、前期日程で4.0倍、後期日程で10.0倍となり、近年の高い水準を維持することができました。
 以上の教育の面での変更に加えて、今回の改組では、教員組織と教育組織を分離したことも大きなポイントです。従来、工学系の教員は大学院の教育組織(工学研究科、融合科学研究科)に学生と一緒に所属していました。改組後は、大学院の学生は融合理工学府の各コースに所属し、教員は教員組織として新たに設置された工学研究院に所属するようになりました。これにより、教員が複数のコースでの教育を担当することや、分野横断的な研究などがこれまで以上に活発になることを期待しています。しかし、これまで長年にわたり教員が教育組織に所属してきた感覚を切替えることは言葉で言うほど簡単ではないことがわかってきました。これは学生に寄り添った教育を大切にする意識に基づくものであり素晴らしいことですが、一方で、幅広い専門性をカバーする工学部の教員組織全体としての可能性を狭めているとも言えます。
 以上のように、平成29年度の改組後の状況について紹介いたしましたが、今後も1年次学生を対象とした「工学とは何か」を理解させる授業における卒業生による講演、次年度から本格実施する3年次学生を対象としたプロジェクト型授業における産業界からの指導への参画など、卒業生の皆様のご見識やご経験に頼る機会が数多くあります。今後とも、工学同窓会の皆様のご理解、ご支援を賜りたく、宜しくお願いいたします。